宇宙農業通信 第38号 (15 May, 2008)
宇宙農業サロン会合 17 March, 2008

宇宙農業における太陽光の利用 -火星における In-Situ Resource Utilization (ISRU)の可能性-
大野英一:玉川大学
アリゾナ大学でなされた火星でのその場資源(主として太陽光)利用研究について紹介された。太陽光の集光・分配のシステムとしては、ラフォーレエンジニアリングの開発したフレネルレンズによる色収差をつかった可視光のみを導入するシステムと、反射鏡を使うシステムがある。後者は軽量である上に光を導入する際の損失がすくない。ダブル・ミラー形式とすると太陽光の追尾も楽におこなえる。人工光( LED, Xe, メタルハライドランプ)との組み合わせについても検討された。
理科について興味をもたない生徒にも科学の楽しさを伝えたいということで、高校1年を対象に宇宙農業を素材にした授業をおこなった。最初に宇宙農業について説明する授業をおこない、その後の週で研究者が生徒の質問にこたえ、特定の領域について追加の説明をした。生徒は研究者との段差のない会話・交流をたのしみ、身近な食料といったことから地球の環境を大事にしないといけないという意識を確かめたりすることができた。
森滋夫先生からも、宇宙農業は、普段の生活の延長に宇宙を考えることができ、女子大の講義でも有効な素材であることが紹介された。
火星のアストロバイオロジー有人探査をささえる宇宙農業の構想とその課題
宇宙農業サロンでこれまでに検討してきた構想をまとめた資料です。まだよくは練れていない内容ですが、要望あればPDFファイルをお送りします。
表紙
目 次
なぜ わたしたちは宇宙を飛ぼうとするのか 5
生命にいたる宇宙の歴史 5
自然発生しない生命と生命の起源 10
生命の起源に関するいくつかの説 14
生命の起源を火星にさがす 17
どうしたら わたしたちは宇宙を飛べるのか 20
地球から火星へはどのように往復するか 20
ロケット推進の力学 22
火星への軌道の候補とdelta V 22
現地資源の利用 23
宇宙工学の勘どころ 24
現在使われている生命維持技術 25
火星で要求される宇宙農業 25
火星での農業の展開シナリオ 27
火星農業実施における第1段階 29
火星農業実施における第2段階 31
火星でいきるための宇宙農業の構想-日本やアジアの貢献 36
火星探査をささえる宇宙農業 36
宇宙農業システムのなかの物質循環とエネルギー流 38
宇宙での基本食材の選択と栄養学 39
昆虫食と樹木の利用 43
高温堆肥菌生態系による物質循環 48
Naの分離と再生利用 57
宇宙と発酵・醸造 -般若湯、乳酸菌食品 59
宇宙農業への日本・アジアの貢献 61
人類の文明の礎としての 宇宙農業のすすめ 63
地球生態系でのエネルギー・物質・情報のながれ 63
地球の食料をとりまく諸問題 66
持続可能な農業 70
宇宙農業の地球の問題への貢献 71
参考文献 73
平塚農業高校での宇宙トマト栽培実験 藤森明夫:平塚農業高等学校
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平塚農業高等学校で、 LDEFで6年間宇宙環境に曝されたトマトの栽培実験が、園芸科学研究班の活動としておこなわれている。
LDEF宇宙トマトの播種(1.30)、発芽(2.8よりはじまる)。上の写真は移植しているところ(2.19)
第一回移植(2.19)後のトマト、撮影 2.26
宇宙農業サロンの会合(3.17)に参加して実験報告した平塚農業高校の生徒と藤森先生
2008年3月25日 (左:地上対照群。右:宇宙6年曝露実験群)宇宙曝露した種子からそだったトマトのほうが生長が早い。
2008年5月6日での生育の様子。わきめを挿し木して苗を増やしている。
平塚市 緑化まつり(4.27)で宇宙トマトを展示し、注目をあつめた。
UN conference promotes insect eating for everyone from famine victims to astronauts
Beastly bugs or edible delicacies FAOのページ
タイのチェンマイで、2008年2月に15カ国の科学者が、国連・食料農業機構( FAO)の組織した昆虫食の会合に集まった。その会合で、三橋先生から宇宙での昆虫食の構想が紹介され、うえの記事が世界に配信された。
Astronaut Leroy Chiao tasted Pupa Cookie, holding our ASR Entomophagy paper
有人宇宙システムの顧問であるルロイ・チャオ宇宙飛行士が、カイコサナギいりクッキーを試食した。左手に持っているのは、 Adv Space Resの昆虫食の論文。宇宙用昆虫食を初めて口にいれた(そのあと確実に嚥下したかは確認されていないが)宇宙飛行士となった。初飛行( IML-2, 1994)ではイモリの実験でお世話になった。国際宇宙ステーションには2004-2005年に229日間搭乗し、その時だけでも36時間以上の船外活動をした。
Happy Space Hour ! 宇宙でお酒を 長谷川洋一:有人宇宙システム
高知県宇宙利用推進研究会「てんくろう(天喰郎)の会」が酵母を宇宙に送り、その酵母で宇宙酒を作っている。各醸造元が丹精してつくる宇宙酒は、こもった気合いで おいしい。
「現代の名工」とされた杜氏が仕込みをしている塩竃の造り酒屋「浦霞」を訪ねた。宮城県内でしか買えない生酒は絶品。理由無くお酒に手が伸びるのはアルコール中毒だが、これには「絶品を愛でる」という言い訳ができる。
宇宙でもおいしいお酒をつくりたい。
お酒を仕込み中には、蔵の前に杉玉がつり下げられる。
オーストリアのレストランにつりさげられるBuschen。そんなレストランをBuschenschank とよぶ( shankは酒飲み場、旅館の意)。 Bushenは小枝を束ねたものであり、それが吊り下げられていると、ワインがそこで饗せられる。洋の東西で、似たようなサインが使われている。(オーストリアの宇宙農業サロンメンバー:ザイデルさんからの情報)
クワを育ててその葉でカイコを飼育しようというのが宇宙農業構想。クワの木材を食料に変換できないかと、日本きのこ研究所で クワのおがくずにより、シイタケ、キクラゲ(ともに乾すとビタミンDが多くできる)を栽培できるかが実験された。みごとに育つ。
テレビ番組 TBS BS-i 2008年宇宙の旅 (2008年2月、3月放送)火星編で、バイオスフェア2実験の紹介などと一緒に、片山先生のカイコのサナギやドジョウなどを調理した宇宙食が紹介された。片山先生の宇宙食レシピ集の第二弾が近々刊行される。
玄米、コマツナの吸い物、ドジョウのマリネ、青菜のおひたし、サツマイモの巾着絞り。おいしいのをわかるように撮影する秘訣は、暖かい料理からは湯気、焼いたハンバーグの表面には油のテカリ。
創造性の育成塾 今日のひとこと 山下雅道 キムチをたべて宇宙で健康 (8 Apr 2008)
韓国人女性の初の宇宙飛行がなされ、国際宇宙ステーションに韓国で開発された宇宙食がおくられ、一夕 韓国食パーティーであったとのこと。今回の宇宙キムチは1年常温放置しても食すことができるという基準を満たすために放射線により滅菌されているが、わたしたちは、腸内細菌叢を健康に維持するために、漬け物など乳酸菌食品を取り入れようとしている。
フランスの宇宙機関 CNESの広報宣伝誌 CNES Magの2008年1月号に日本の国際宇宙ステーションなど宇宙計画が紹介されている。そのなかで、宇宙農業(64ページ)がおおきく取り上げられている。
火星へは木造宇宙船で Moscow Winter visit with Korean colleague
冬にモスクワの生物医学研究所 (IMBP) Ilyinさんを、韓国の仲間と一緒に訪問した。
火星有人探査(クルー6名、うち火星表面に降りて探査するのは2名を想定、往復500日以上)を模擬して、特に閉鎖した宇宙船内での心理学的問題をさぐるための設備。 IMBPとヨーロッパ宇宙機関 (ESA)との共同実験。
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内装には木材(オーク)が使われている。調理・食事室、執務室。すでに一度テストランがなされたとのこと。ロシア人クルーがのこしたロシア正教のイコンがあった。木材の使用は、心理学的な要求としてなされている。現在の国際宇宙ステーションの金属からなる内部風景とはことなっている。故・長友先生のはじめられた宇宙林業構想は、ロシアで常識として取り入れられている。
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サウナとトイレ。シャワーや浴槽はなく、熱風サウナで汗をながし、使い捨て布ワイプで汗をぬぐうだけという。衣料含めて洗濯することは想定なし。ここでの模擬実験では、どうやら排泄物は処理せずたれながしだが、火星ミッションでそれが許されないことは認識されている(開発は他の組織が担当?)。
回収衛星に搭載されるスナネズミ(尿を出さないので生命維持システムを単純なものにすることができる)の実験装置。腸内細菌叢を健全にたもつプロバイオティクスの手法(乳酸菌の効果検証)について実験する計画がある。
冬のモスクワ
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冬のスポーツまっさかり。(クロスカントリー・スキーと赤の広場前スケートリンク)
宇宙開発のオベリスク(博物館は整備中だった)
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モスクワ市内の観光名所の通り(左)、郊外に再建された宮殿に附属するロシア正教の教会
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羊肉のシャシリークとボルシチ・スープ、レバーのパテ。民族衣装をまとった食堂の案内係。
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豪華な地下鉄の駅のひとつ。 Ilyinさんにおもしろいレリーフ(膝の上に顕微鏡)のあることをおそわる。これぞ宇宙での生物実験風景。
国際宇宙ステーションの有償利用の募集があり、有人宇宙システムが応募した花伝説(CosmoFlower)が採択されたテーマのひとつとなった。
宇宙につぎの植物の種子をおくり、地上に回収して栽培する。
奄美市農業研究センターのシロバナヒカンザクラの種子が宇宙へ
奄美市朝戸の同市農業研究センター敷地内にあるシロバナヒカンザクラの種子が今秋、宇宙に打ち上げられることになり、十四日、近くの大川小学校(山川哲郎校長、児童三十四人)の児童が種子を採集した。(南海日々新聞 2008.4.15)
2008年はタケノコの当たり年、堀りたてのタケノコをざく切りにして油で揚げ、塩を振ると、えぐさはなく(たまに外れもあるのだが)酒・飯ともにすすむ。
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2年前に植えたクワ(左:「宇宙蚕用の桑」の標識あり)はヒョロッとしていたが、2008年春(右)にはたくさんの桑の実をつけている。ジャムがつくれそうだ。
群馬県の蚕糸技術センターから群馬黄金の卵をいただいて2008年の第一回養蚕を開始。
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黒米(品種名:黒田苑)のモミ(左)を手に入れ、田植えの準備(右)。水面にうくのはアカウキクサ。 秋山豊寛さんも黒米を栽培しているとのこと。
サツマイモはスイオウ(葉や葉柄もおいしい)を育てる予定。
Proposed space food suffers from 'smell problem'
同上日本語訳記事 火星向けの「宇宙農業」を日本の研究者が提案――問題はにおい
アカウキクサを含む宇宙食 Azolla as a component of the space diet during habitation on Mars を片山先生が Acta Astronautica に投稿し、掲載されたとたんに、「ちょっと匂いが」と書いたこともあって、世界中にニュースがめぐった。
2008年の相模原一般公開 8/9(土)(宇宙農業も例年通り展示)
日時:平成20年8月9日(土)10:00〜16:30